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本当の人工楽園
クリエイティブの真実

何を着ているかではない、なぜ着ているのか。その「なぜ」を紐解くユートピア的ライフ。
ユイスマンスから学ぶ、こだわり愛撫と孤独の放蕩のゆるぎない精神。

何を着ているかではない、なぜ着ているのか。その「なぜ」を紐解くユートピア的ライフ。ユイスマンスに学ぶ、愛撫と孤独の放蕩の精神。

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皆さん、ユイスマンスはご存知だろうか?
フランスの小説家で役所に務める傍ら過剰な内容の小説を生み出していった変態だ。
僕は彼の作品の中で、圧倒的にさかしま 澁澤龍彦(訳)を好んでおり、彼が構築した
人工楽園であるユートピアな世界には、今の僕たちに足りない「なぜ」が詰まっている。

 

ユイスマン01

ユイスマン01

http://www.huysmans.org

 

さかしまの主人公デ・ゼッサントは、色の魔術師でもありながら、酒と夜の孤独の
放蕩のスペシャリストでもある。
そして、究極のインテリアコーディネーターでもあると考察する。
いくつか例をご紹介しよう。

 

デ・ゼッサントの生活は、夜に限定する。
従って夜という孤独の暗闇に精神快楽を隣り合わせ、彼の家の各部屋には徹底した
こだわりと色彩感覚が詰まっている。
青は蝋燭の光で見ると、不自然な緑色をおびる。コバルトや藍は黒になる。
明るい色は灰色に近づく。
トルコ玉のような暖かく柔らかい色は、艶を失い冷たくなるという。
彼の色に対する考えは、想像を超える。
彼はオレンジが好きで、蝋燭の光であらゆるニュアンスを研究し、最高のオレンジを発見する。
もちろんその色は居間に使われる。
鏡板には藍色の塗料を塗らせ、藍色はオレンジ色に支えられ温められたかのような不動なブルーになる。
逆にオレンジ色は青色の激しい息吹きによって強調されお互いに混濁するでもなく、
各々の自己の領域を守ると言った具合だ。
そうして各部屋に基調を作り出し自身のユートピアを作っていった。
まだまだ色彩のこだわりはあるが、続きは是非「さかしま」を呼んでもらいたい。

 

ユイスマン02

ユイスマン02

http://www.pinterest.com

 

もう、既にお分かりだろう。
色という概念は、どれだけPANTONEやDICで指示を出したところで、無力にしかないということだ。
世のデザイナーにも学んでもらいたいと思う。

 

最後に彼の音楽の感性を紹介しよう。
彼は「口内オルガン」を完成させている。仕組みはこうだ。
1個のボタンがすべての活栓と連結しており、自由に開閉可能な仕組みになっている。
内部は板壁に隠されボタンを押すと廻転する活栓から、下に置かれた小さなカップの中へ酒が滴り落ちる。
その時、オルガンの蓋は開かれ、並んだ引き出しに、フルート、ホルン、天使音栓と貼札がしている。
こちらで一滴、あちらで一滴と酒を味わいつつ、内心の交響曲を奏でるのである。
喉の奥では音楽が耳に注ぎ込む感覚が得られると言った具合だ。

 

ユイスマン03

ユイスマン03

http://www.pinterest.com

 

もう、彼が素敵な変態だということは、理解してもらえたと思う。
口内オルガンも何を飲んでるのではなく、なぜ飲んでいるのかに紐解かれる。

 

現在を否定する程の、芸術的スキルは持ち合わせていないが、現在のファッションや
芸術の自然な流れには、ほどほど飽き飽きすることは間違いない。
それらを自然の現象とするのなら、完璧なまでに計算され、指示を出し、作られ、
そしてそれらを理解して購入する流れが、反自然といえよう。そして、僕たちはそれを好むと確信している。
ユイスマンス自身もこう言っている
「自然はもうすたれた。自然はその風景と空とのいとわしい単調さによって、
洗練された人々の注意深い忍耐力を疲れさせてしまった。
人工こそデ・ゼサントにとって人間の才能の決定的なしるしだと思われた」

 

反自然とは、形而上学の観点からみるならば、神もしくは悪魔に当り、
心理学の観点から見れば、リビドー的無意識あるいは、性的倒錯に当り、
社会学の観点から見れば、労働あるいは技術に対応すると考えるからだ。

 

さぁ、そろそろ面白いファッションが作り出されても良いんじゃないか?
ゴミを作っているわけでもなく、愛撫と孤独と放蕩のゆるぎない精神に身を任せ、
ファッションというユートピアを作りたいものだ。