ボバン 激昂のレジスタと失われた世代のナショナリズム | Epokal エポカル

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不感症のナショナリズム
失われた世代の
純粋なる国威

近頃の若い世代はダメだと叫ばれて
何を愛せば善いのだろうか。
国粋主義の無意味な理解。

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純粋なる国威

近頃の若い世代はダメだと叫ばれて
何を愛せば善いのだろうか。
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無責任と遠謀の愛国心
腑抜けたパンと
僕たちの憂鬱

1990年5月13日
ボバンという伝説が誕生まれ、
純粋な愛国というものを初めて識る。

 

・・・・・・

 

 

どこかの、それはそれはエライセンセイ方が作った御決まりのなかで、浪費するようにひたひたと生きている。
いとも簡単に仕込まれるトラップは坂道を転げるボールと同じに、
どんなに非道いことが起こりようとも、忘れっぽい僕はすぐに、はじめの衝撃を失ってしまう。
それだけすごいスピードで時間が流れている。

 

腹がたつ政治面にも、あっという間に次の手が打ちこまれる。
それはもう、まるで洪水のように。ちょっと待って欲しい。
一度、溢れ流れ出した水は止められない。
それも次々と零れてくる、仕込まれた流れは轟々と過ぎ去り、
呑み込まれた街のことは触れずに、またきっと、僕はそのことを忘れる。

 

午後にこの2週間分の新聞を開いていた。
遠目からもう一度、じっくりと見渡すことで、何かが少し嘘っぽく感じられた。
稚拙なシナリオで進められる争点が何のためのものなのかやっぱりよくわからなかった。

 

この年になるまで決して自分のものではなかったことがある。

ミニチュアトイか映画の中で美しく描かれるジェット
重厚な用の美に置き換えられる戦車…を男の子はきっと、かっこいいものとして見ていた。
現実から遠く離れすぎた写実は、そのシルエットだけを綺麗に切り抜いた。

マッチボックスの片隅に置き違えたのは、もちろん子供のせいではない。
世界の惨状から切り離された時、ミニチュアの爆撃機は他に代わりのないものとなった。
兵士の姿に逞しさや力強さを覚えるのは、争いのない平和な国だけである。
反対に、その本質と結びついた青写真を思い浮かべる瞬間から大人の凍えた表情を覚える。

 

nationalism

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http://www.srebrenica.org.uk

 

例えば、明日から僕たちは、人を殺すことが可能となる。

それから、僕たちが、人に殺されることも可能になる。

正直に言うと、端的な印象はそれだけに、
それでもこの手に実感がつかめていないのは僕だけのことではないと思っている。
何かを守るためか、それとも何かを攻めるためか、このどちらの一人称にも、
相手にとってすら僕という個人の人格サイズはちっとも当て嵌まりそうにない。
そんなところに出て行くだけのフィーリングすら持ち備えていないのだから仕様がない。
大切なものだから、重いものを賭して争うのだろう。憎いのか、利権のためかに攻めるのだろう。

だけれど、その大切なもの、その愛国のナショナリズムを抱いた人がどれだけいるのだろう?
この2週間分の背徳を解しながら、一人の男の背中を思い出していた。

 

Zvonimir BOBAN

 

ボバンのプレーを見なくなってから、もう随分と経った。
ミラノの赤と黒のストライプに憧れた子供たちも、大人になってしまった。
イタリアのCalcioがまだ本物のヨーロッパリーグだった頃の、本当の10番プレーヤーの一人だったボバン。
だが、僕はどうしても、クラブではないナショナリストとしての、
独立国“クロアチア”代表としてのボバンを追ってしまう。

 

旧ユーゴスラビアの名門ディナモ・ザグレブでトップデビューしたボバンは19歳にして、既にキャプテンを務める。
名門クラブの若きレジスタは、この後、引退するまで変わることのない希代のプレーセンスで
中盤からチームを数シーズンぶりの優勝へと導こうと牽引する。
この当時、常にトップを争い、そして常に敗れていた相手がレッドスター・ベオグラードである。
1987年にユーゴスラビアユース代表に選出され、
プロシネツキ、シュケルと後のヨーロッパを席巻する三本柱でワールドユースを制覇する。
この時点で、ボバンの未来は明るいものと見られていた。

 

ところが、彼らのストーリーはその背景を隠したままでは展開できない。
1989年に起こる東欧革命の流れはユーゴスラビア中央政府を刺激した。
民族主義政党のクロアチア民主同盟が連邦を構成する各共和国初の自由選挙で勝利したのである。
このことで中央を担っていたセルビアにおいて、
セルビア民族主義なる中央集権化を目論む、彼のミロシェビッチが台頭することになった。

 

こうして1989-1990シーズンはクロアチア、セルビア両民族にとって、
そして純粋な愛国主義者を自称するボバンにとって、只ならぬ奥行きを持つものとして幕を切られた。

直前の選挙と、クロアチア愛国を謳うボバン自身がセルビア中央政権から疎まれてなのか、
代表から外されるという異常事態のなか、
1990年5月13日の国内リーグ、ディナモ・ザグレブ対レッドスター・ベオグラード戦、
クロアチアとセルビアそれぞれを代表するビッグクラブ同士のゲームが執り行われることとなる。
試合開始前からディナモのBBBとレッドスターのデリエと呼ばれる熱狂的サポーター同士の小競り合いが絶えず、
スタンドに火が放たれた瞬間から騒ぎは暴動化した。
さながら民族間の代理戦争を思い描く構図となる一方で、
試合どころかシーズン以前から内在していた紛争問題の余波が、
レッドスターの優勝が既に決していたこの民族問題のダービーマッチに全てが表面化してしまったのである。

 

ボバンはザグレブサポーターを強襲する警官隊と衝突。
証言によると、潜在的な民族間同士の争いが水面下で沸々としているにも関わらず、
警官隊のほとんどがセルビア人で構成されたものであったと言われている。
新政府未成立で迎えたこのビッグマッチで、
セルビア人が取り仕切る旧体制のままの警備ほど民族意識を煽るものはなかっただろう。
結果、スタンドは崩壊し、発炎筒と催涙弾がグランドとボバンの愛国心を包み込むことになる。

 

nationalism

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http://stateofthegame.co.uk/

 

この日、ボバンは警官の一人に飛び蹴りを喰らわせて大きな問題となる。
ワールドカップイタリア大会を含む9ヶ月もの出場停止処分を受けることになるのだが、
平然とした10番は、こう語る。

 

「サッカーを戦争だという者は、本当の戦争を知らない」

 

僕たちは偶然というにはあまりに不自然に、米国という確かな他国の地の隣で生まれ育った。
それでも空高く飛び立つジェットの放物線に、あの子供の頃、
かっこいいなと思って眺めていた。誰でもそうだろう?

 

けれど、映画の中の派手なアクションがイメージを作り出そうとした時、
空を飛んでいない、寝静まった格納庫でオイルの臭いを嗅いだ。
鼻腔を刺激する非日常的な空気に、直感的に誰かの死を感じ取ってしまっていた。

その日から、放物線は鈍い響きしか残さなくなっていた。

 

そして、海のこちら側で戦争がはじまる。

 

nationalism

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http://ww2db.com

 

つまり、僕は無責任である

ニュースで見た赤い空はよその人のものであって、片足は僕のそばには落ちていない。
親も子も亡くさないし、食べるものも僕のものである。でも、この手で何かをつかむことはない。
何かとは何なのだろうか、一民族が当たり前に持つものを僕は備えていない。
ナショナリズムとか、愛国とか、国民という言葉に最も遠いところで育ったのではないだろうか。
70年間脱脂乳と小麦粉で腑抜けにされた僕に立ち上がる力などはまるでない。

 

けれど、そんな僕にも、すぐそばにいる人のことはよくわかる。
あまりに遠くで量られる他所のことは見えづらい。
それは創造力がどうという問題ではなく、意図的に失わされたことなのだと思っているのだが、どうだろう。

つまり、僕たちは無責任なのだ。他人を通過することにも、そんなすぐ近くのことはよくわかる。
誰だって大切なものを殺されるのは嫌だろう?だから誰も殺されるなとよく考える。
そして、一番重要なことは、大切なものの正体をしっかりとつかむことにある。

今日、論旨は収拾のつかないことになっているのかもしれない。
そのことはやっぱり、僕の元へまだ落ち着いていない。
だから、僕は自分の欠けている部分を手に取るところからはじめたいだけである。
何かを守るのであれば、守るもの-愛する国をつくることからが始まりなのではないかと思い出している。

 

ズヴォニミール・ボバンという伝説の後姿に

愛国心の本当を見ている気がしたのは、僕だけだろうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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