twit btn

Nigel Cabourn
ファッションと執心と
もう一方のストーリー

歴史を明白に受け取れるリアル
クリエイティブマインドの向こう

Nigel Cabournの領域を理解するファッションと(un)ファッションマロリージャケット BEHIND

twit btn

クリエイティビティを抱くものは、併せたように偏執的なこだわりも抱えていることが多い。

直接クリエイションにつながる場合もあれば、リラックスしたり、身体を動かしたりするという様な、
一見まったくつながりのない時間をもつことで、
創作意欲へ昇華させるといった所動的なこだわりであることもあるでしょう。

ファッションに関わる人の偏りはまた、端的な発信源としての立場から大変な面白みに満ちているといえます。
ファッションという世界は華やかだというイメージはもう、昔話のことですが、
現代では多くのデザイナーやクリエイター、あらゆる表現者が簡単に自分の趣味や指向性を示すことが可能であり、
もはやそうしないことは自らのアイデンティティブランドにとって大きな損失であるともいえます。

プロフェッショナルの中の、一流のクリエイティブマインドはどういった方向へむかおうとしているのかを知るのは
現代のちょっと先いった、明るい明日のための基点となるのかもしれません。

 

mallory jacket

mallory jacket

 http://www.cabourn.com

 

Nigel Cabournというブランドを手にしたことがあるでしょうか。

正確には「made in England」というオーセンティックな精神に触れられる機会は、
往往にして、そうありふれた感性ではないように思えます。

デザイナーであるナイジェルはプロダクトに携わって40年オーバーのキャリアを超える、
デザイナーを超えたデザイナーであることに疑う余地はありません。

それというのも、彼はまた、自身の名前を冠したブランドと世界観によって、
彼自身の価値を生み出すことを続けられる数少ない一人だからです。

彼のアトリエに並ぶ灰色のロッカーを思い浮かべてほしいのです。
4000点以上にものぼるヴィンテージウェアのコレクションは、
彼の志向がファッションという時勢やトレンドのようなものに囚われることのない、
アーティザナルなマインドを示しています。

 

ナイジェルの志向とは、スポーツやミリタリー、アウトドア、ワークウェアに向かっていることが

明白に受け取れるリアルにあります。それも歴史にあるような現実の動きに向けられています。
そしておそらく、それはそこに生身の人の呼吸が感じられるがために、語りかけてくるものがあるのではないでしょうか。

ナイジェルのコレクションを一度見てみると、この実が簡単に飲み込めます。
古い戦争の写真や、黄金期の炭坑夫、極地を目指した探検隊の足跡の記事、そしてヒマラヤの英雄たち。

「少年」にとっての無限の夢がナイジェルの中に鏤められているのです。

 

mallory jacket

mallory jacket

http://www.cabourn.com

 

教科書で教わることが外観であるとしたら、ここはその歴史を動かした人間たちの内腑が覗き込める穴となっています。
誰もが知っている歴史や時事、ビッグニュースをもたらせた「人々」の
素顔のストーリーの背景に広がる奥行きほど心をくすぐるものはありません。

彼らのゴーストを追いかける歴史学者のように緻密な考察によって、衣服を作り上げることで、
もしかしたらヴィンテージのコレクションも歴史の一部となる日も遠くないようにも思えてくるクリエイションは、
もしかしたら驚きは少ないのかもしれませんが、核心を捉える力が、感覚というファッションの体幹を支えてくれます。

 

突然、遠い向こう側の景色でしかなかった歴史という大げさなストーリーが、
色合いをもって降りてくることを拒めるわけがありません。
時間も場所も環境状況さえも超えたアトモスはそれほど刺激のつよい引力を備えているのです。
これは現実にリンクする自分との奥行きの交換か、共有と呼べるものではないでしょうか。

単なる一着の衣服にしか過ぎないものに、時間や既成事実の概念をかき分けてつかんだナイジェルの血肉を注ぎこむと、
世界はいつでも開いていることを知らせるマインドになるのです。

 

ここにいくつか、古い本があります。発行年もタイトルもほとんど同じものを指していて、
もう一つ共通するのはヒマラヤという場所についてのエピックであること。

1919〜1924年までの初登頂を目指した初期エヴェレスト遠征隊のストーリーは、
既に、私たちの胸を熱く高鳴らせたものでありますが、
ナイジェルもまた彼らのゴーストを追うデザイナーの一人です。

 

mallory jacket

mallory jacket

http://www.cabourn.com
 

エヴェレスト登山をファッションからアプローチすることは、
もしもアーカイブが残されているのであれば、バーバリーを除いて、
とても難しいことは解りきったことではあります。
だからこそ、「Nigel Cabourn」というマインドの領域を理解するのに
うってつけのテーマとして体現されたのはないでしょうか。

 

Mallory Jacket Autumn/Winter 2014

ナイジェル・ケーボンのコレクションの中でも最も有名なジャケットは、デザイナーの志向と、
エヴェレスト登頂史のもうひとつのストーリーである、
ジョージ・マロリーの面影がクロスオーバーしたジャケットとして生まれました。

前身は、これもまたエヴェレスト史に欠くことのできない二人、
世界最高峰を初めて制覇したテンジン・ノルゲイとエドモンド・ヒラリーを送り出した1953年遠征隊から、
シェルパの行動服にインスパイアされたシェルパジャケットとして発表されました。
これはつまり、シェルパであり最強のクライマーでもあったテンジン・ノルゲイの名を付けられた、
ナイジェル・ケーボンのオーセンティックなラインでした。
次第次第に、妙のあるスペックの改良を重ねられたマロリージャケットは、
リアルなものとして手に取ることのできる最高のストーリーと質感を備えています。

 

mallory jacket

mallory jacket

 http://www.cabourn.com
 

シェトランドウールを用いたハリスツイードの生地の織りもまた、他にはない表情と雰囲気を放っています。
イングランド機の気質をデザインするために必要なイメージも、知識も、
ナイジェルというヴィンテージコレクターは十分に、その素養を発揮しているように思います。

マロリーと同時代のサンプルや資料・映像を熟視してみると、
マロリージャケットの質感の優秀さにすぐに気がつくでしょう。
襟やポケットのシェイプをいくら眺めても、真実は浮かび上がってはこないのかもしれません。

ですが、このアプローチのように、事実というストーリーの背景に夢中になり、
触れることのできる瞬間を少年のこころと呼ぶ、大人の遊びとするのはいかがでしょうか。

 

 

マロリーのゴーストはここにも私たちの志向を試しています

どのように、いつ、誰が、ここでそれを着ていたのか、インスパイアされたのか、

 

このエピックがつながっていくのでしょう