twit btn

Anrealageのパリデビューで浮かび上がる
日本ファッションのトラウマとは一体何か?

Anrealageのパリ 日本ファッションに
変化をもたらすのか?継承される
Comme des Garconsの系譜

Anrealageのパリ 日本ファッションに変化をもたらすのか?継承されるComme des Garconsの系譜

twit btn

3・4年ほど前だっただろうか、ちょうど東京コレクションが終わった頃あるブランドについて
話していたところ、ある知人がそのブランドのデザイナーを「今日本で一番のデザイナーでしょ?」
と彼は僕に言った。その時から僕は、彼と服の話をすることをやめた。

 

そして月日は流れ、そのブランドが先日ファッションの聖地パリでデビューコレクションを行った。
パリコレクションに発表の場所を移すというニュースを見たときの気持ちを正直に言えば、
「この人何しにパリに行くんだろうか」というものだった。
東京で発表している頃から、あまりにもあからさまな元ネタからの引用(パクリ)が目立ち、
デザイナーとしてのセンスもプライドも、そして元ネタを作ってきた先人たちへの敬意を
感じないそのクリエーションに敵意すら覚えるほどであった。
1つ1つAnrealageの元ネタを明かすという舌禍騒動も今は昔のことで、私はそのような
無粋なことはしないがあれをパリで発表するなど正気の沙汰ではないと思ったのが本音だ。

 

そして、日本時間の9/25未明に発表された「思考と造形と技術だけで勝負した」とデザイナー
本人が語った2015SSコレクションは、あらゆる意味で期待を見事に裏切らなかった。
素人のDJを聴いているようだ。ひたすら気分が悪い。

 

anrealage016

L) http://media.style.com/  R) http://media.style.com/
 
anrealage016
L) http://media.style.com/ R)http://media.style.com/
 
anrealage016
https://scontent-b.xx.fbcdn.net/

 

思考と造形と技術。服作りに限らずモノをつくる上で最も重要な要素を三つ並べた上で、
自分がその三つを持っていることを前提にし、”それだけ”で勝負したと言い切るデザイナー。
その三つはこのデザイナー、ひいてはブランドに最も足りない要素であるはずなのだが。

 

anrealage016

http://www.fashionsnap.com/

 

彼がリスペクトし、バイブルとしているであろうUNDERCOVERの”DJ”とは次元が違う。
もはやミックスすらされずコンピレーションのレベルだ。

 

今回のAnrealageと日本メディアにとって非常にお目出度いパリコレデビューを観たときに、
自分が日本人であることを実感した。同じ日本人としてとても恥ずかしかった。
これが私の率直な感想である。
世界の皆さん、あれはジャパンクールでもなければ日本の最先端でもありませんよ。

 

内容を見ても、今回発表されたものは同ブランドが東京コレクションにおいてこれまで
発表してきたものをまとめたごった煮のようなショーで、それはあまりにも重く、明らかに
消化不良を起こしていとことは否めない。
主観だけが強い自己満足のコレクション(あれで満足できる自己とは一体何なのだろうか)で
コレクション全体を見てもバランスが悪く、また、パリコレクションを舞台にして発表している
コレクションブランドとは思えないくらいプロダクトとしてのクオリティーの低さが目立つ。
発表前唯一期待できるポイントと考えていたとライゾマティクスの真鍋大度による演出も
さほどの驚きはなく、結果としてはこれまでと同様の日本生地の見本市レベルを脱することは
なかった。

 

このコレクションについて、私が唯一信頼していると言っても過言ではないモード・クリニシュエの
平川武治氏は会場で実際にショーを見たそうで、氏のブログにおいてその様子と批評を書いて
いるので、ご興味がある方はこちらも参照して欲しいのだが、会場には、ファッションジャーナリスト
というよりはブロガーが目についたということで、日本の一部のメディアの盛り上がりに反して、
海外ではかなり冷静に捉えられているというのも、至極まっとうな反応であり文字通りこれが
彼の”real”であろう。

 

また、平川氏も指摘されているが、現在の日本のファッションシーンにおいては
comme des garcons川久保玲の影響を受けた川久保チルドレンとも言えるデザイナーたちが
メインストリームを構成しているという側面がある。

 

anrealage016

L) http://media.style.com/ R) http://media.style.com/
 
anrealage016
L) http://media.style.com/ R) http://media.style.com/

 

Undercoverなどはその系譜にいるブランドの一つであり、乱暴に言えばcommedes garconsの
手法をうまくパクり利用した上で、裏原ストリートというテイストをプラスして
差別化を図ることで成功した。
更に、高い評価を受けた”But Beatiful”コレクションは一見するとやり過ぎているとさえ思える
のであるが、優れたバランス感覚と構成要素を限定することで意図が明確であるが故にその
強さが伝わる。
そして、実際のセールスラインもテーマが落とし込まれていながらコレクションのルックほどは
やり過ぎないバランスで発売された。

 

anrealage016
http://fashiongatecrasher.com/

 

anrealage016

http://121.52.210.197:5678/

 

Anrealageというブランドのデザイナー森永氏は発言やクリエーションから間違いなく
Undercover越しにComme des Garconsを見ており、主観としては後継者である自負を
持っているのだろう。
しかしながら、率直に言ってしまえば、現在のこのブランドにファッションの聖地であり最激戦区
であるパリにおいて、数多のブランドを向こうに回して戦うだけの力はないだろう。
デザイナーだけではなく、明らかに周りのスタッフの能力もパリで闘うレベルではない。
モデルが着用している服の小じわにすべてが集約されているように感じた。

 

パリコレデビューでいきなり公式スケジュールにラインナップされ、さも世界的に注目を集めている
かのようなメディアの扱い方にも疑問を持たざるを得ない。
これは、ファッションに限ったことではないが、メディアの成熟度はその分野の成長にとって
必要不可欠の要素である。
本当に良いものであると思い、取り上げることでバックアップしているのであれば構わないが、
無思考の賛美には何のメリットもない。
しかし、残念ながら現在の日本ではファッションジャーナリズムはほとんど機能しておらず、
神格化された御三家への盲目の賛美を繰り返しながら拝み倒し、それと同時にもう現われることは
ないであろうその再来を待ち望んでいるのだろう。
そして、なによりもメディアがクリエーションを正当に評価する術を持っていないということが何よりも大きい。
今回のコレクションを見て、クリエーションの能力に欠けるという点もさることながら、Anrealageの
森永氏が人間的に非常に純粋で真面目な優等生タイプで尚且つ主観の強い人なのだろうという
印象を覚えた。これは、実際にお会いしたことはないので、仮説にすぎないが、そうでないと
今回の様なものは創れないのではないだろうか。

 

日本のファッションシーンにおいて、とくにモードファッションのおいてはComme des Garcons
川久保玲という魔法使い(魔女)のかけた魔法(呪い)が未だに解けずに残っていることを強く
感じるとともに、やはり日本のファッションシーンが独特であることも再認識した。
一般的には、二代目はパッとしないで三代目が初代を超えるような活躍をするということが
あるが日本のファッションシーンでは少し違うようだ。
これまでも、これからも個人的にAnrealageというブランドには期待することは無いだろう。
コレクション終了後のインタビューで、コレクション制作中に「死ぬかと思った」と語っていた。
この先は無粋になるので言わないが、価値のないものは自然に淘汰される。
季節が変わればやってくる次のコレクションをパリで発表することは見送るという勇気ある
決断のみを期待するが、この期待もいとも簡単に裏切られることになるのだろう。
いささか厳しい表現になってしまったが、Anrealageに限らず日本のファッションクリエーション力の
衰退を本気で憂う者が少なからずおり、ファッションに携わる全ての人に大いに期待しているのも
また事実である。