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ベッカムでなければ
ベッカムでなくても
ファッションと夢の劇場

「The Class of ‘92」
センセーショナルなストーリーと
降りてこないシュート

人々を巻き込んで突き抜けて、信じられないような結果をもたらせる。それが他の誰でもないベッカムの才能だ。

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彼は今、何を感じているだろうか。イングランドから、ヨーロッパ中に広がった
センセーショナルで、エモーショナルな電光石火のストーリーを共に駆け抜けたチームメイト、
「The Class of ‘92」はそれぞれのスケールでフットボールを継続している。

イングランドのトップシーンで肩を組み合う様にキャリアを積み重ねていく「チーム」に、
彼の姿が見えないことがたまらなく寂しいのはどうしてなのだろう。

 

まだ、アカデミーから上がりたてのグリーンボーイの一人にすぎなかった頃を知る、
あるOBは92年組を振り返ってこう言う。トレーニンググラウンドから引き上げて来る時、
皆トラックスーツを着ているのだけれど、彼だけはいつも裾を半分折ってブロンドを輝かせて歩いていて、
どんなに遠くから見てもすぐに見つけられた。

世界中でプリントの入ったユニフォームシャツが飛ぶように売れまくる、10年以上も前の話である。

 

そして今日、ファッションショーのフロントロウに足を組み構える。それがDavid Beckhamである。

 

 

ベッカム自身、この時から今のセレブリティとしてのライフワークを想像出来てはいなかっただろう。
とはいえ、ファッションの華やかな世界にまったく興味がなかったわけではない。
ファンから呼ばれたピッチの上でのニックネームはロケットボーイ、
マンチェスターの小さなトレーニンググラウンドから羽ばたいたベッカムは今や、世界一ジーンズの似合う男と称され、
バイクに跨り、カメラの前でボールなしで写真に納まることが出来る。

 

one beckham

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 https://www.facebook.com/Beckham
 

イングランドの1フットボールチームの新しいスター候補となったベッカムは、
ピッチ上のパフォーマンスと同様に、プライベートでも名前が挙がるようになる。
まずはじめに、オールドトラフォードを訪れる、人相の悪いサポーターに混じって若い女性客が見られるようになり、
次第にフットボール以外の紙面を飾るようになった。

今日まで、ファッションメディアへの露出をキャリアから身を引いた後でさえ
ポーズし続けたアスリートは他には見当たらない。
そのライフスタイルへの世間の関心の高さから、何か事ある毎に、
何もなくてさえ、ドレスコードの中心にベッカムが据えられようとされてきた。

 

最愛のパートナーとなるビクトリアとの出会いによって、フィーバーは世界へと渡ることになる。
既に世界的なスーパーアイドルだった彼女をモノにした幸運な男としてニュースは駆け巡った。
ベッカム本人でさえ、自分が最高の幸せを手にしたといわんばかりの表情を思い出すのはオールドファンだろう。
確かにビクトリアとの結婚が、素晴らしいサクセスストーリーを導いたことは間違いない。
彼女はファッショニスタとして、今やオリジナルブランドを抱えるプロフェッショナルであり、
ベッカムもまた、これまでに多くのシグネチャーラインに関わってきた。
この2人と子供達を含んだファミリーの叩き出す影響力は、もう誰の手にも届くものではないのかもしれない。

 

one beckham

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 http://www.vogue.co.uk/news/2015/01/20/hm-david-beckham-modern-essential-edit/

 

最初のゴシップ誌の報道からほんの数年でベッカムとビクトリアは、世界のファッションアイコンとなった。
現役時代からアスリートでありながらハリウッドスターと肩を並べ、
さながらレセプション・パーティーに格好の良いスタイルを披露する。

 

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 http://www.mrporter.com

 

プライベートなカジュアルスタイルがスタイル発信のインフルエンサーとしての役割を担う。

そして、おそらくベッカムはこのことが気に入っている。

 

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 http://www.popsugar.com

 

あれだけ影の強い眼光を見ると、ビクトリアが夫デイビットをここまで
引っ張りあげてきたのだと考えてられているかもしれないが、それに大きく肯くことはできない。
今では単なるアイコンから抜け出して、ベッカムとファミリーはシーンを牽引する。
ここまでやってくるにはベッカムの持つものがなくてはあり得なかった。

ビクトリアではなくベッカムの運命が引き寄せた。

それは、他の誰でもないベッカムだけの才能だと思う。マンチェスター・ユナイテッドでのキャリアは
ベッカムにとってもそしてユナイテッドにとっても最高の数年だった。
とても黄金期という言葉で片付けられないストーリーに、誰もが納得できるのではないか。

 

とは言え、まわりの人々を巻き込んで突き抜けて、信じられないような結果をもたらせる。
そんな世界の扉を拓いたあとに、マンチェスターという劇場から離れていくのは必然だったのかもしれない。

 

one beckham

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 http://www.dailymail.co.uk

 

結局、ベッカムはユナイテッドよりもビクトリアを選んだのだ。

 

今日のようなキャリアが、どうしてもベッカムでなくてはならないのか、そうでなくてもいいものなのか、
私にはわからない。ただ、次第次第に彼の影は薄まり始める。

 

ファッションスタイルは完璧だし、言動に力もついてきた。
家族に接するスタンスはこれから世界中に伝わる良識になるだろう。
ファンを思いやる気使いはいつでもかわらない。

それでもやっぱり、ハリウッドのパーティーや最新コレクションの最前列で笑顔を売るのは、
他の誰かが出来ることなのでは、と冷ややかさを感じてしまう。

 

そうして彼には運命がついてまわっている。

 

2010年3月10日ベッカムがトラフォードを去って以来、はじめてホームに帰還した。
ただし、シャツは真っ黒いアウェイ用ジャージー。
ファッションの国イタリアの洗練されたスタイリッシュなトラックスーツが、何かを物語った。
ゲームの流れはほとんどユナイテッドが握っていたこともあり、
ストレットフォードエンドと呼ばれる最強の悪魔たちが陣取るエリアからも、
この日は何か違う空気が発せられたように思われた。

 

右ワイドから中央へさばくようにプレーする、ミラノのセットピース、代名詞とも謳われるフリーキック。
目を開いたままでも#7を背負うベックスをトレースすることが出来る。
目を閉じていても落とせた距離とそれから、位置。右足。あの時と同じフォームで、
クロスとシュートは回転して、降りてこずに、そしてバーを越えていった。

 

ゲーム中から考えこむ仕草と表情をみせたベッカム。
トレブルを獲ったシーズン、弾けるようにしてピッチを上下したロケットボーイは、明らかに大人になろうとしていた。

この日、ベックスのプレーに、ストレットフォードエンダーズから最高の応援歌が聞こえる。

 

One David Beckham , There’s Only One David Beckham .

Only One David Beckham , There’s Only One .

 

ユナイテッドのサポーターはいつでも、彼のことを愛している。

ベッカムのロイヤリティがチームにどれだけの功績と幸運を呼び込んだかのかも忘れていない。

だからこそ、ベッカムにベッカム自身の姿勢で臨んで欲しいと思ってしまうのである。

 

one beckham

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http://www.manutd.com 

 

姿がだんだんと薄まっているように感じる今日

もう一度見た横顔は赤いシャツで染まっていた。