twit btn

寒い冬も
暑い夏も
T-SHIRTの境地

素材・グラフィック・かたち。
Tシャツのシンプルにこめられた
デザインの効率。

ファッションで迷った時はモノの見方をかえてスタイルの新しいストーリーをはじめる。Tシャツとファッションの自由なメッセージ。

twit btn

Tシャツを着ない日が月に何日あるだろうか。

Tシャツを何枚くらい所有しているだろうか。

そのTシャツのどこが気に入って購入したのだろうか。

カジュアルにモードに、ストリートシーン、ファストファッションからハイファッションまで、
最も扱いやすく、着やすくて、最も身近な衣料品であるTシャツ。
だからこそ、何も感じずに答えられないことが多いのかもしれない。

 

grateful dead

grateful dead

https://www.maharishistore.com

 

最高級の素材で肌触りと品位を求めることも一つの選択であり、
古着屋へ通いつめて気に入ったのグラフィックと大いなる歴史を
テロテロの天竺の質感に求めるのも面白いだろう。
最先端のカットワークとヒリヒリする様なモード感を求めて斜めに構えることも、
もちろん優越された選択肢である。

 

ただ気ままに手にした適当なものを着ているだけでは決して分からない、
そしてそうしてモノゴトに会う機会を棄てて暮す人種が分かりたくもないであろう世界を見ていたい。

 

Tシャツもしくはカットソーと簡単にイメージを捉えていても、
粗雑に扱われたモノと、実に手をかけて縫われたモノがあることは意外と忘れられているとことではないだろうか。
例えばステッチ一本にしても、Tシャツほどラインが踊ったまま市場に出荷されるケースは他にはほとんどなく、
逆に言えば、二本針ステッチと縫い代始末の美しさは、
モノの良さを理解できる日本の消費者にしか見えない質でもある。
要するに、一度気になって手持ちのTシャツの襟ぐり処理を見はじめると、
着るものを馬鹿にしているのかと疑いたくなるくらいの出来のものも存在するのが現実である。

 

70年代頃のTシャツ黎明期に縫い上げられたモノには、
今となっては手に入らない素材や縫製技術を盛り込んだものが溢れているが、
現代だから高速マシン化されたシステムとデザインコピーに満足するのではなくて、
こうした先時代の意匠を酌むことが今日のファッション産業に求められていることに気がつきたい。

手の込んだ製品はその分だけ高価になるものだが、
つまりその分まじめに仕事をしているから高価になるといっても良い。
児童就労や閉鎖的な地方出身女性を強制家内労働から低賃金就労へと解放することに
陰ながら貢献するのも気安くていいのかもしれないが、
もしも価格だけで衣類を購入しようとしているのであれば、
ほんの少しだけでも、その背景からファッションの奥行きを感じてみて欲しい。

 

そして覚えておきたいことは、ジーンズと同様にTシャツもまた‘育てる’ファッションなのである。

古着Tシャツによく見られるパキスタン綿やインド綿の他には換えられない質感は
いつかは消えゆくものなのかもしれないが、スミソニアン博物館に額装されてしまう前に
その意匠を受け取りたいものである。

 

Grateful Dead Steal Your Face 1976

grateful dead

grateful dead

http://www.dead.net

 

最近、よく見かける風合い=手触りの良さだと思い込ませるように謳った
化学繊維が混ぜられた(ダメな)素材を使ったTシャツが「カットソー」と誤魔化されて売り出されているが、
それを除けばほとんどのTシャツは経年とともに良い感じに暮しと風景になじんでくる。
新品の糊の効いたカットソーも良いけれど、
そこから大切に着つづけて自分のものにするという感覚も覚えたいものである。

 

言っておかなければならないのは決して(ダメな)素材が悪い素材ということではない。
モードにとっての重要なファクターとして、確かに素材の(ダメな)質感を必要とすることがある。

 

Rick Owens

grateful dead

grateful dead

https://www.rickowens.eu/en/

 

素材のやわらかさだけが着心地ではないし、ダメな質感が不要なわけでもない。
それぞれに見合ったモダンの流れと、パターンカットという設計図が‘心地’を支えているのである。
例えば縫い目が脇にあるのと無いのとでは着心地が違うと言われている。
個人的には脇縫い目のない丸網みが着心地良いと感じたことはないけれど、
確かに裁断や縫製技術からくる「脇ヨレ」はひどく気になることがある。
それを着やすいようにきれいに整形するのも、
デザイン上のファクターにするデザイナーと着る人との受け取る自由領域でしかありえない。

 

FELCO

US Tubular Knitと呼ばれる脇縫い目のないオーセンティックT

grateful dead

grateful dead

http://unionlosangeles.com/2011/06/18/felco-made-in-usa/

 

20世紀初めにNYやLAのような大都市からはじまったスポーツ用の衣料の開発は、
技術的な進化がもたらせた高機能素材の向上やスポーツ科学の進化と歩みを合わせるように、
近未来映画に見たような機能を人々に実感させることに成功した。
温冷感を調整する新素材、トップアスリートのパフォーマンスを支持するパターンは
スポーツという枠から日常生活で使うレベルのTシャツにまで広まってきている。

 

ARC’TERYX VEILANCE

grateful dead

grateful dead

http://veilance.arcteryx.com

 

ところで、ハイテクニック衣料のデザインフォームは見た目的にどうなのだろうか。
螺旋状に身体を包み込む工学的なテクニックは運動性能を高めることにフォーカスしたものである。

SPEEDO社のあの時のスウィムスーツを着て街を歩きたいと思うだろうか?

答えは当然、イエス。
着心地の「心持ち」は何も身体的なものではなくて、
むしろ着たいものを着ているという精神的な優越からもたらされるのだと感じる。

 

Tシャツの「T」が、その型から名付けられたことは誰にでも分かっていることだが、
ここは敢えてTシャツの「T」のかたちにこだわっていきたい。

簡単にいうと、「T」の中にもゴシック体なのか明朝体なのかという
とても重要かつ、熾烈な要素がつまっているのである。
同じ「T」を頭文字に据える偉大なる「Tバック」について挙げると、
迷うことなく明朝体を選ぶところであるが、
シャツとなるとボディラインにきっちりと沿うシェイプよりも
ゴシック体の面のようなシルエットの方がかえってスタイリングに良いのかもしれない。
いわゆるシルエットという遊びの中でも、Tシャツは自由に描かれることが多かった。

 

Maison Martin Margila

grateful dead

grateful dead

http://www.maisonmargiela.com

 

Tシャツは自由意志を現せる最も身近なアイコンとしての役割も果たしている。
プリントしたメッセージやシンボルは、着る人の精神そのものを体現する可能性をすらも持っている。
自らかたちづけた「T」というフォルムを乗り越えられるのがTシャツの鋭さであり、自由である。

 

人は何かに対してコレといった印象を勝手につくる。
Tシャツは、もしかしたら飽きられて定番の定番となった着古しのファッションなのかもしれない。
けれど、そのTシャツの奥底に眠る自由な意思はいつまでも変わらないという良さも確かにある。

 

効率化と簡素化がひたすらに進む世の中にあって、
淘汰され得ない豊富なデザインの意思が薄い一枚のシャツに見えていることにどれだけの人が気づけているのだろうか。

日本にTシャツ文化が流入してきた頃、
どうしても服の内側に着るインナーウェアとしての慣習が根強く、
また慣習に倣う習性がその何倍も強い日本の人々には中々受け入れられなかったという。
そしてこれを打ち破ったのは体制を煩く思う若者層だった。
今や当時の‘若者’はどこにいってしまったのか全くわからないが、
ファッションライフというメッセージを自由に送ろうとする
反体制派のスタイルをもっともっと多く見ていたいと願っている。

 

grateful dead

grateful dead

http://www.maisonmargiela.com