Hummelのオーナーへの
単独インタビューから
躍進の理由を紐解く
『Change the World through Sport』
というカンパニーカルマはどのように
実践され、発展していくのか?
『Change the World through Sport』というカンパニーカルマはどのように実践され、発展していくのか?
前回もご紹介したようにクリエイティブな国としてデンマークにおいても
一際目立った躍進をみせるヒュンメルは現在、ナイキやアディダスといった
巨大スポーツブランドとは一線を画す経営で世界から注目を集めているのだ。
この度、世界初のグローバルパートナーシップ契約を締結したSSK株式会社との
発表記者会見のためにデンマークより来日したクリスチャン・スタディール氏への
単独インタービューの機会を得た。
短い時間ではあったが、カンパニー・カルマやCSRの枠を超えたビジネスの展開、
そして、今後の日本市場でのコラボレーション企画について、発表前のオフレコの
話まで飛び出すなど、Epokalからの問いに対して忌憚なく答えてくれた。
Epokal(以下E):本日はよろしくお願いします。早速、最初の質問をさせていただきます。
ヒュンメルは現在スポーツブランドとしてだけではなく、スポーツファッションブランドとして
世界中で認知されていると思いますが、それはどのようなことがきっかけだったのでしょうか。
クリスチャン・スタディール氏(以下C・S):私がヒュンメルの経営に初めて携わったのは
1999年なのですが、まず 最初に行ったことは、ファッションアパレル部門を独立させることでした。
完全に別のブランドとしてヒュンメルのブランドを確立していこうとしたのです。
E:なるほど。今ではファッションがスポーツの要素を本格的に取り入れることが当たり前に
なってきていますが、ヒュンメルではかなり前からそのような提案を行ってきたのですね。
そんな中でスニーカーはファッション・ライフスタイルには欠かせないアイテムの一つだと思います。
ヒュンメルもウェアよりフットウェアのイメージが強いですが、何か狙いはあるのでしょうか?
C・S:スニーカーを始めとするフットウェアはヒュンメルの根幹を成すアイテムであり、
ブランドの象徴ともいえるものです。
1999年にファッションアパレル部門を独立させて以来、スニーカーは売り上げの面でもブランドを
ドライヴ(駆動)してきましたし、今後もより一層力を入れていきたいアイテムです。
E:やはり売り上げもスニーカーの比率は大きいのですね。昨年あたりから巷ではスニーカー
ブームが続いており、ナイキやアディダス、ニューバランスといったブランドのスニーカーを多く
見かけます。こういった競合のブランドとヒュンメルの製品の違いはどのような点にあるのでしょうか?
C・S:よい質問ですね(笑)。あらゆる面においてナイキやアディダスといったブランドは世界各国に
現地法人を立ち上げていますし、それぞれに株主がいるため利益を最優先で追求していかなければなりません。
会社の規模が大きいメリットもあると思いますが、ヒュンメルのオーナーは私一人ですので、利益だけに
縛られることなく、社会的意味のある行動をとることも可能なのです。
例えばアフガニスタン女子サッカー代表のサプライヤーになることはリスクが高いのでアディダスや
ナイキなどはサポートしませんが、私たちはそれを行っています。チベットのサッカー代表も同様です。
また、デンマークのクリスティアーニという街には世界最大のヒッピーコミューンがあります。
彼らのサポートも行っています。これも他の会社にはできないことでしょう。
すこしインテリのように聞こえてしまうかもしれませんが、私たちはこうした活動を通して会社としての
立場や製品に込められた想いやストーリーを伝えていきたいと思うのです。
街にはアディダスやナイキのスニーカーがあふれていますが、それは私たちのようなブランドが入り込む
余地があることの裏返しでもあると思います。そういったオルタナティブを目指していきたいと思います。
E:そういった社会的な取り組みは、今後重要性が高まってきそうですね。
ファッションブランドでも先進的な企業はすべての面において透明性がブランディングの重要な要素に
なってくると考えているようです。
その際には、そういった取り組みをより直接的に消費者に届けていく必要が出てくると思います。
FBやtwitter,instagramなどのSNSの他にも、例えばバーバリーのアートオブザトレンチのような独自の
メディアの重要性が高まってくるのかと思いますが、どのようにお考えでしょうか?
C・S:まさにその通りだと思います。私たちが大切にしているコンセプトやストーリーを届けていくためには、
SNSのようなメディアは欠かせません。私が経営するトルニコグループにはヒュンメル以外にも様々な会社があり、
テクノロジー関係の会社もありますので、その重要性は非常に感じています。
E:そうですね。ファッションはウェブやテクノロジーの導入が遅いという指摘がされていますし、
ヒュンメルがどのようなウェブ戦略を展開されるかも楽しみですね。
すこし話が前後しますが、先ほど伺ったスニーカーだけではなく、ウェアの展開について今後の展望を
お伺いしたいと思います。
以前日本のファッションブランドとコラボレーションを展開していましたが、今後そのようにデザイナー
とのコラボの予定はありますか?
C・S:もちろんです。たくさんありますよ。以前コラボレートしたHummel Jは日本だけではなく、
世界中で高い評価をいただいて、ヒュンメルの新しい側面を示すことができました。
今後も、atmosとはスニーカーのコラボレーションを予定しており、ユナイテッド・アローズとも
コラボレーションの企画が進行中です。そして、2016ssシーズンからはHummel Jを再開する予定と
なっています。
どれも素晴らしい製品をお見せすることができると思います。
E:それは非常に楽しみですね。発売されたら私もお店に見に行ってみます。最後の質問になりますが、
今後ヒュンメルの商品をどのような人たちに身につけて欲しいとお考えでしょうか?
C・S:これもよい質問ですね。(笑)私たちが現在最も力を入れているのは母国であるデンマークの他に
ドイツ、そしてトルコです。
特にトルコに関しては急激な成長を見せており、トルコ国内に90以上の店舗を展開しています。
そしてアジアでは日本、韓国です。日本においては、SSKに世界で唯一のグローバルパートナーとして
商標権という鍵を譲渡しておりますので、今後ライフスタイルカテゴリーの売り上げの拡大を想定しています。
また、先ほどのスニーカーの話にもありましたが、アディダスやナイキといったブランドの製品が街に
あふれていますが、そういったものとは異なる価値で商品を選びたいと思っている方に是非ヒュンメルの
製品を愛用してほしいと思います。
E:トルコでの市場の拡大はすごいですね。今後の日本での展開も非常に楽しみですし、何よりヒュンメルの
思想に触れられたような気がします。今日はお忙しいところありがとうございました。
クリスチャン・スタディール氏へのインタビューを通じて、ヒュンメンル躍進の理由が明確なヴィジョンと
行動によって、独自のスタイルを確立したことによるものであると確信した。
今後、商標権という鍵を手渡されたSSKが日本でどういった展開を見せてくれるか期待感が高まる。
Epokalでは『Change the World through Sport』というカルマを掲げ、独自のスタンスで創造し続ける
ヒュンメルを追っていきたい。