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足元の花に気がつく時
色彩やかな万華の世界が
日々に映りだすだろう

無感動な日々を置き去りにして
たがの外れた違和を膨らませてみる。

無感動な日々を置き去りにしてたがの外れた違和を膨らませてみる。

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ほんの何年か前までは持っていたのに
今はもう持っていないものはなんだろう。
お腹が痛くなるくらいに嫌いだったことから逃げたりする時
どこへ逃げたかったのだろうか。
誰かを気に入ったり、気に入らなかったり
行きたいところなどほとんどわからなくて
つまらないことまでよく見ていた。
生の中にある、ほんの小さな違いを
母親の横顔を盗み見るように感じとってしまう。
信号機が緑から黄に移る瞬間の
本当かどうかわからなくなるような
何となくのブルーを抱えていた。

 

 

バスの窓から見た広告看板の色が変わっていた。
本屋がコーヒーショップになったりもした。
あの日見ていた夢をどうか忘れないでほしい

 

もしかしたら、たった今。
煙草の火を踏み消しながら西陽を浴びて
この善き一日を終えようとしている。
腹のなかではマスターベーションしながら
一日と夕焼けの間の曖昧な緋色に入り込む。
ベッドのなかに頭まで潜り込み
赤ん坊だった頃の居心地の良さを蹂躙して
その奥の圧倒的な安堵に身を寄せている。
赤ん坊は小さなフルートに見えるおもちゃで一人遊んでいる。
泣きだすこともなくて、おこりだすこともない。
見られていることは疎か、まわりを気にすることもなく
丸い背中が赤みを帯びていて
白いくつしたが当たり前のように真白い。
なにもかもを見ていて、なにも見ていない。
すでに僕は身を乗り出して赤ん坊の目の前まで踊り出ている。
お互いの顔を見合わせて表情を傾ける。
左手と右手とが重なり
少しずつ赤ん坊が僕の方に向かってきているような気がしてきて
大げさに笑い手を振っていると、実際にやっぱりそうなる。
危うい足取りで寄りかかるようにして立ち上がり僕と正対する。
身体中の水分が蒸発して微熱のだるさが渦巻くなかで、
誰が自分なのかも知らない。
何かを知っているでもなく甘い境界線の上にただ在る。

 

 

昔はわからないことはわからないとちゃんと理解る人だったと思う。
今はいろいろなことを知らないままで通り過ごせるようになった。
同じものを見て同じ感動を覚えるように導かれていて
隣の席に座った人との距離を測るような人。

 

花はキレイでチョウはひらひら
土は茶色く空は青い
顔はシロくあたまはカラッポ

 

 

大人になるとゲームを予測していなければならない。
愉しいことをたのしいと感じなければならなくて
この言葉の次にくるべきアクションを構えていなければならない。
返事を必要としないでいるべき態度があり
そのこと自体を知っていなければならない。
愉しいことが楽しいのか
楽しいと思わなければならないのかがわからなくなって
それがそれなりに楽なのかもしれない。
本当は、これが愉しいことなのだと
ただそう思わなければならないだけのような気がしている。

 

サヨナラホームランの気分はどうですかとインタビュアーが聞いて
満足顔のヒーローがサイコーだという。
もっと届く声を出せよと息を吐く。
瞬間にこういうものだと思い知らされてもいる。
海はクロいし雨はクサい
イメージが大切だと教わり
写生大会は曇空だったのに一人残らず青い空を描く。
午前二時の太陽をぐるぐると塗り潰す。

 

 

だれかと目があった。
わらっている。ないている。うたってもいる。
いつも見ているひとたちとはちがって
じぶんかってに話しかけてこないし、目をそらすこともしない。
みぎ手とひだり手の大きさでさわろうと思えばいつでもさわれる。
子どもみたいなかおのくせに手だけがきたない。
ふしぎといやな気もちにはならないけれど
ぼくのなかのどこかへ向かっていっしょうけんめいにはしゃごうとしている。

 

さっきスーパーマーケットで見た女のひとは
こうえんによくおちているカナブンの羽みたいにきれいだった。

 

まっすぐ光が動き出して世界がひっくり返る。
世界中に新しさが溢れていた日々は
本当は未だ過ぎてはいないのではないか。
グレーの服に包まれているうちに視線に色彩が褪色せてきて、
花の風月も無為にしていたのかもしれない。
今は眩しさに目を眩ませてしまうほどの万華の世界を。

 

 

いつもとちがうことを見ることや、知らないことを知ること。
想像もしないことを知ることも
既成の地図を放り投げることで浮かんでくる。
知っている100メートルよりも知らなかった10メートルを
気がつかずにいる新しい色彩を暮らしたい。
思いがけず見ないままで蓋をしてきた事々に立ち止まっていたい。
華々しさを恥ずかしがることなく受け止めていたい。
今、桃源郷にいる。
曖昧で実体のない疑問が葉っぱのように落ちている。
誰かに聞いてもられるようなことをたくさん置き去りにしている。
神格化された偶像はエロティシズムの果てにあり、
歴史に上塗りされた七生は権化へ踏襲する。
罹災は配給され、現代の慰と精進する。
普通じゃない違和はどこにでもあるし
すぐ目の前にも落っこちている。
異質なものを見る目は毎日新しいことを期待するから
一日が遠く、時間が過ぎることは遅すぎる。

 

そこへ
往くには遥か遠くて降るに不精で
万華へ辿り着いた人が戻ることはもうない

 

あるいは、普通じゃないと背中を刺されるかもしれない
ただ其所が見えているのか見えていないのか

 

過ぎ行く日々の桃源郷

 

厚い靄が二つを隔てている

 


Text by Yuki Kuniyoshi
Photographer : MARCO
Stylist : Sumire Hayakawa
Hair & Make : Hitomi Matsuno
Model : Mappy

 

blouson : Jenny fax / skirt : MIKIO SAKABE / shoes : UNIF
big blouse : MIKIO SAKABE / corset : Jenny fax
race blouse : Jenny fax / overalls : MINJUKIM
gown, china blouse, pants, bag : KEITA MARUYAMA
coat : writtenafterwards / inner dress : SueUNDERCOVER
dress : KEITA MARUYAMA