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1960年代のヒッピーが
示したカルチャーの本質

『Power to the People』と異文化感
を本質に持つヒッピー・ムーブメントを
感じて21世紀に何を創っていくべきか

『Power to the People』と異文化感を本質に持つヒッピー・ムーブメントを感じて21世紀に何を創っていくべきか

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皆さんの中で、ヒッピーとはどのような印象だろうか?

ファッションで言えば、絞り染めのTシャツやフレアジーンズにチューリップハットや
エスニック調のワンピースなどが一般的なイメージだろうか。

そして、いわゆるヒッピーファッションは古くダサいものとして認知されている人が
多いのではないのだろうか。

ランウェイにおいてもしばしばデザインソースとしてヒッピー・カルチャーが用いられる。
下記の写真はRodarte 2013awのショーの写真だが、タイダイ染めが大きくフィーチャーされ
使い方によっては、悪くないとも思わせるものだった。

 

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http://i.dailymail.co.uk/

 

しかし、少し前にヒッピーという言葉を改めて聞いて、個人的にそのカルチャーの
根幹にある思想や哲学を見直したことがあった。

おそらく、これを読んでいる方の多くがリアルタイムではヒッピー・ムーブメントを経験しては
おらず、親世代のもので、イメージだけが先行しその本質的な部分はイマイチ知らない人も
多いのではないだろうか?

そんな「ヒッピー」という言葉を改めて聞くようになったのは、アップルの創業者である
スティーブ・ジョブズが死去した時であった。

 

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http://www.motivat8d.com/

 

若かりし日の彼はヒッピーで、その頃に仏教の影響を受け、禅の精神を大切にしていたなど、

ヒッピー的ライフスタイルを重んじていたことをメディアが盛んに報じていたことがきっかけだった。

今や誰もが知っているアップルを創業したカリスマがヒッピーであった事実は一昔前の
ヒッピー=ダサいというイメージを見直すきっかけには十分であったのかもしれない。

見直すきっかけがやってきたといっても、ではヒッピーってつまるところなんだというのが
正直なところという人も多いはずだ。

ヒッピー・ムーブメントとは、簡潔に言えば米サンフランシスコを起源とするカウンター・カルチャーであり、
緩やかな社会変革運動のことである。
そして、ヒッピーとは、そのカルチャーを持っていた人たちのことを指す。

そんなヒッピー・ムーブメントの最盛期は、1967年夏に起こった「サマー・オブ・ラブ」であると言われる。
この際、サンフランシスコのヘイトアシュベリー地区へ、全米から10万人以上のヒッピー達が押し寄せた。

 

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http://cdn.playbuzz.com/
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http://all-that-is-interesting.com/

 

街角では爆音の音楽が流れ、LSDの効果で恍惚となりながら両手をあげて踊り狂う人々がいたりと、
とにかく「何でもアリ」の自由な空気が満ち満ちていたのだ。

そこに集まっていたヒッピーの多くは、15~25才のアメリカ白人であり、ドレスコードはエスニック風の
ビーズネックレスに、ヒゲにサンダルか裸足の男、ロングスカートやスモック、さらにヘッドバンドや
アメリカ・インディアン風のファッション。ボディコンシャスな格好は皆無で、拘束感の少ないリラックスした
エスニック感がポイントとなった。

 

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http://blog.denimtherapy.com/

 

ヒッピー達にとって大事だったのは、このエスニックつまり「異文化感」だ。

その理由は自分たちの属するアメリカ中流文化に「ノー」を突きつけようとしていたからで、
官僚や大企業など、進学競争や出世競争をしてきた自分の父親のような会社人間になることへの反対。
それは戦後のアメリカが礼賛してきた物質主義や、中産階級的な道徳観や、規律などへのカウンターだったのだ。

それは思春期にありがちな「両親への反抗」だったかもしれないが、どんな世代にもある
親世代への反抗が、戦後のベビーブームによって人口が多かったことや、世代間のギャップが
大きかったからなど様々な理由を背景にして世界中にインパクトを持つほど巨大なムーブメントになったのだ。

そんな巨大なカンターカルチャーを形成していったヒッピーは、当時、反戦運動や公民権運動の
旗手となった新左翼の大学生たちとは違い、政治変革は目指していなかった。
むしろその本質はPower to the People。個人の手に力を取り戻し、自力で暮らしを建て直し、
個人と個人のネットワークにより社会変革を目指すことが思想の根幹でありヒッピー・ムーブメントの本質だった。
コミューン(共同生活)を通して、身のまわりから世界を変えることができると信じた人々がヒッピーだったのだ。

そんなヒッピーの中でもハードコア・ヒッピーと呼ばれた人たちが、ケン・ケイシー&メリー・プランクスターズと
呼ばれた人々であり、中心人物のケン・ケイシーは、映画『カッコーの巣の上で』の原作者だ。
当時まだ合法だったLSDの人体実験に参加してすっかりハマり、サンフランシスコ郊外の山奥に家を買うと、
同好の士10数人と共同生活を始めた。そして自分たちをケン・ケイシー&メリー・プランクスターズと呼び、
LSDパーティをやっては、まったり楽しく遊び暮らした。

このコミューンにいたのが、のちにスタンフォード大学卒業式のスピーチでスティーブ・ジョブズが引用した
ことでも有名な「Stay Hungry, Stay Foolish」というフレーズで知られる雑誌『ホール・アース・カタログ』の
創立者スチュワート・ブランドであった。

 

 

ブランドは「丸い地球(ホール・アース)」の写真があれば、人類は一つの惑星にいることを実感し、共同体意識が
芽生えるのではないかという考えから、NASAに対して「丸い地球(ホール・アース)」の写真を公表するように
申し立て運動を起こした。

 

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L) http://upload.wikimedia.org/ R) http://greenz.jp/

 

そして、ヒッピー・ムーブメントの本質であるPower to the Peopleの思想を根幹にした
『ホール・アース・カタログ』を創刊したのだ。

ここまででも、ヒッピーが単なる理想主義者のお祭り騒ぎではないことが少しお分りいただけたのではないかと思う。

そして、クスリを使うことを肯定したりヒッピー・ファッションがいいなどといった表面的なことを言いたいのではない
という事も分かって頂けるだろう。

ファッションに限らず、ジャンルや個人の嗜好の多様化などでカウンターを当てるべきメイン・カルチャーが
見えにくい時代になり、カウンターとしてのサブ・カルチャーはその存在自体が問われるような時代に、
私たちはどんな思想や哲学を持ってファッションに取り組むか、後編へ続く。