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ドイツの街の裏路地で
世界一美しい本を作る男
からのメッセージとは?

五感で感じて本を選ぶということが
教えてくれるオルタナティブな
ライフスタイルの豊かさと可能性

五感で感じて本を選ぶということが教えてくれるオルタナティブなライフスタイルの豊かさと可能性

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最近本を読んだだろうか?近年出版不況が叫ばれ、今年は、お笑い芸人が芥川賞を受賞し、
ベストセラーとなっているが、出版業界も話題作りには必死だろう。
(『火花』の良し悪しを言っているのではない。未読だがきっと賞に値する本なのだと思う。)

ひとえに本といっても、ジャンルは様々で文芸・小説、雑誌、写真集、アートブックなどがあるが、
中身もさることながら売れ行きを左右するだろう要素としてあげられるのが、装丁だ。
レコードやCDならジャケ買いということも珍しくはないだろうが、本を装丁のデザインで買う人は、
同業者(装丁などのデザイナー)かよほどの好事家だろう。

しかし、この世にはジャケ買いしたくなる本が存在する。2013年には、彼に密着した映画
「世界一美しい本をつくる男」が公開され、多くの人が彼の仕事に魅了された。その男の名は
ゲルハルト・シュタイナー。

 

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http://www.cinelibre.ch/

 

ドイツで自身の名を冠した出版社であるシュタイナー社の代表を務める彼の元には、
ノーベル文学賞受賞者のギュンター・グラスやアメリカの写真家ロバート・グラス、
ファッション界の重鎮であるカール・ラガーフェルドなどからひっきりなしに依頼が舞い込む。

 

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http://lachanelphile.com/

 

日本では、出版社が企画や編集を担当し、デザインは専門のデザイナーに依頼、そして、
印刷所や製本所によって最終的に本となるのが一般的だが、シュタイデル社では、書籍の編集から、
ディレクション、レイアウト、印刷、製本、出版までを自社で行っており、こうした全ての工程を
自社で完結するというアプローチは、日本はおろか世界中を探しても類例を見ない。

 

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http://www.canterburyfilmsociety.org.nz/

 

こうした完璧主義の元で創られる本は、いわゆる工業製品的なものではなく、作品へと昇華され、
世界中にシュタイデル社が手掛けた「作品」のコレクターを次々と生み出しているのです。

 

steidl

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http://www.huhmagazine.co.uk/

 

冒頭でも触れた出版不況の大きな理由としては、ネットの普及とそれに伴うデジタル化という
時流があるだろうが、シュタイデル氏はデジタルを否定しない。

本には人の生の感覚、つまり本を手にした時の重みや、ページをめくる際に感じる紙の質感、
印刷した際のインクの匂いなど私たちの感覚に働きかけてくるものこそが、本を特別な存在に
しているということを話している。

 

steidl

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http://static1.squarespace.com/

 

映画の日本公開時に、シュタイデル氏が「日本のみなさんへ」として綴ったメッセージには、

「日本は、紙や表紙用の布など、世界で最も美しい本の為のマテリアルと技術を有する国です。
色、印刷紙、印刷機など本当にすばらしい技巧の伝統を持っています。
この豊かさを知っていますか?」と日本の印刷技術に触れ
「私のような本造の情熱を足跡に続く勇気ある後継者が沢山でてくることを心から願う」としている。

 

シュタイデル社のように1冊数十万円する本を作ることだけがよいというわけではないが、
短期的な利益ばかりを追求するマーケティングやコストを重視した本も少なくない中で、
少しでも多くの人が装丁を含めた本の質感や匂いにこだわりを持ち、シュタイデル氏が言及した
日本が優れた印刷技術を持っていることの豊かさを享受することが、「本」の価値を高めることに
つながるかもしれない。本当の価値はいつも灯台下暗しなのだ。

 

そして、これは「本」に限ったことではなく、ファッションや食事、住空間などライフスタイル全般に
同様のことが言えるのだろう。

 

ワンシーズン限りで着られなくなるような服を着替え、食材の旬を知りながら食事をし、
車は所有しないかわりに、一生付き合える椅子をすることの豊かさを考えてもいいかもしれない。